中国 -100年遅れの帝国主義-

現代中国の本質と国際的影響を歴史的背景から読み解く、批判的視点の国際政治ブログ

中国はとっくにレッドラインを超えている──今回の一連で露わになった“異常性”の全貌

 

2025年11月、中国外務省が高市早苗氏の発言を受けて、次のような声明を発表した。

「日本の右翼勢力が歴史を逆行させることを断じて許さず、
台湾への干渉を容認せず、日本軍国主義の復活を許さない」

日本に厳しい姿勢を示すこの声明は国内外で大きな話題となった。
しかし、よく読むほど疑問が湧く。

この言葉、そっくりそのまま現在の中国自身に当てはまるのではないか?

さらに、王毅外相は22日タジキスタンで「日本はレッドラインを超えた」とも発言した。
また、国連事務総長にまで送付された異例の書簡は、単なる外交上の抗議という枠をはるかに超えている。
その裏には、中国という国家が長年積み重ねてきた行動の“全体像”がくっきりと浮かび上がる。

尖閣や台湾での軍事的圧力、国際社会を巻き込んだ言説の操作、日本国内の世論を揺さぶるためのSNS影響工作、そして自らの行為を相手になすりつける独特のプロパガンダ手法。

こうした動きが、いま一斉に表面化して見えるようになっただけであり、今回の騒動は 「中国が何をしてきたか」 を改めて直視する契機になったと言えるだろう。

その実態を順にたどっていくと、中国外務省の発言が単なる“レトリック”ではなく、国家戦略としての宣伝戦の一環であることが自然と見えてくる。

また、中国外務省の発言や、中国官製アカウントの投稿を見ていると、
時に「これは本当に国家の公式メッセージなのか?」と疑いたくなるほど、
世界の常識から逸脱した主張や、理解し難い長文声明が並ぶことがある。

尖閣や台湾に関する攻撃的な文言、
“被害者ポジション”を演じながら相手を激しく非難する異様な論調、
そして今回のレッドライン騒動で見られたような
論理ではなく威圧だけが先行する発信

これらは個々の担当者の独断ではなく、
中国という国家システムそのものの性質がそのまま現れたものである。

この不可解さの根本には、
中国の政治文化に特有の、外から見ると理解しがたい構造が横たわっている。

そこでは政治家にも民衆にも「公共」という概念が希薄で、
“心よりも生存と保身が優先される”制度が骨の髄まで染み込んでいる。

政治家が最も重視するのは、

  • 自らの地位

  • 党への忠誠

  • 家族の安全
    であり、倫理や理念よりも 権力構造そのものの維持が絶対である。

一般の中国人にしても、
法と暴力の支配が連続してきた歴史的背景から、
「正義のために声を上げる」よりも
「家族を守り、波風を立てない」ことを優先せざるを得ない現実がある。

こうした土壌では、政治家の発言に“個人の意思”が入り込む余地はほとんどない。
中国の政治家の言葉は、指導部の意思をそのまま外部へ流す“管”にすぎず、
そこに個人の良心や判断が反映されることはない。

そのため、中国外務省の声明は常に不自然なほど統一され、
世界の常識からかけ離れた内容であっても「国家の意志」として提示される。
今回のレッドライン発言や国連への書簡も、まさにその典型だ。

だからこそ、中国の政治家の言葉を“人間の言葉”として受け取ると誤解が生まれる。
実際のところ、それは政治家個人の心や倫理から発せられたメッセージではなく、
体制が自己防衛のために反射的に吐き出す“音”に近い。

感情や誠意を伴った対話ではなく、
獣が状況に応じて威嚇音を発するような“本能的反応”として理解した方が、
むしろ実態に近いのである。

なぜなら中国の政治構造は、
政治家が自分の頭で考え、良心に従って発言する余地をほとんど認めず、
個々の政治家を“指導部の意思を外界に投射する装置”として扱っているからだ。

ゆえに中国外務省の発言を
普通の国の政治家の論理的主張」として解釈すると必ずズレが生じる。

彼らの発言は、
人間的な対話の言葉ではなく、国家システムが外部へ向けて発する“警告音”であり、
そこに倫理や論理を求めても意味がない。

だからこそ、日本人が行うべきことは、
「一つの国家が発する警告音=“獣の反応”のようなものを、
冷静に観察し、行動パターンとして読み解いていくこと」だ。

ここから先は、
その“警告音”がどのような場面で鳴り、
どんな意図で使われ、
どのように周辺国を威圧しようとしているのか——
その実態を見ていく。

■ 1. 国連事務総長への書簡の内容:日本を国際社会で悪役に仕立てる意図

今回、中国は高市氏発言を受け、

国連事務総長に対して日本批判の書簡を提出し、
さらに内容を全加盟国へ送付すると発表した。

www.asahi.com

 

通常の外交抗議を大きく逸脱したこの動きは、
日本を国際社会で「危険な国家」に見せかけるための政治的演出にほかならない。

書簡には、次の二つの主張が柱として掲げられている。

● 日本が“戦後初めて”台湾有事と集団的自衛権を結びつけた

中国は高市氏の発言を「戦後最大の危険な転換」と位置づけ、
あたかも日本が軍事的野心を持って台湾問題に介入しようとしているかのように描いている。

しかし実際には、
台湾海峡の安定が日本の安全保障に直結することは以前から一貫して説明されており、
高市氏が述べたのは国際情勢を踏まえた当然の分析にすぎない。

それを「軍国主義の復活」と誇張して世界に発信するところに、
中国のプロパガンダ性が現れる。

● 「日本が武力介入するなら、中国は自衛権を行使する」

さらに書簡には、次の文言が明記されている。

「日本が台湾情勢に武力介入するなら、中国は国連憲章で付与された自衛権を行使し、国家の主権と領土を断固守る」

ここで中国は、日本が台湾で“武力行使を企図している”という虚構を前提に据えている。
しかし現実には、台湾に軍事的圧力を加え続けているのは日本ではない。
中国こそが台湾周辺で実弾演習を繰り返し、ミサイルを日本EEZに落下させ、
爆撃機を包囲飛行させて緊張を高めている張本人である。

つまり中国は、
自分が行っている“侵略の前兆行為”を、逆に日本に押し付けて非難する
というプロパガンダの古典手法を使っているのだ。

■ 書簡の正体:国連を舞台にした“国際宣伝戦”

中国がこの書簡を「全加盟国に送る」と宣言した点も重要である。
これは単なる外交文書ではなく、
国連という大舞台を使った国際的な情報戦(インフォメーション・ウォーフェア) だ。

目的は明確で、

  • 日本を「軍事国家」「台湾問題の挑発者」と印象づける

  • 自国の軍事行動を“正当防衛”に見せかける

  • 国際社会の中で「中国は被害者」という物語を構築する

という三重の狙いがある。

これはロシアがウクライナ侵攻前に
ウクライナはネオナチ国家」と虚偽の文書を国連に提出し、
国際世論の混乱を狙った手法とよく似ている。

どちらも、
自分の行為を相手に投影し、
相手を悪役に仕立て、
自分を“防衛側”に偽装するためのプロパガンダ

という共通の構造を持つ。

■ 2. 現実には中国こそ“日本のレッドライン”を常時踏み越えている

中国は日本に対して「レッドラインを超えた」と激しく非難したが、現実を直視すれば、レッドラインを繰り返し踏み越えてきたのは中国自身である。
その象徴が、尖閣諸島周辺で日常のように繰り返される領海侵犯だ。中国海警局の艦艇は30mm機関砲を搭載し、軍艦とほぼ同等の装備を備えた“武装警備船”であるにもかかわらず、ほぼ毎日のように日本の領海へ侵入し、時には日本漁船を追尾・威圧する行為すら行っている。
これは国際法上の主権侵害であり、国家として本来なら重大な対処を要する“真のレッドライン越え”である。

さらに2022年には、中国軍が台湾を包囲する大規模演習を行い、その際に発射されたミサイル5発が日本の排他的経済水域EEZ)に着弾した。ミサイルが落下するという事態は単なる“挑発”ではなく、日本国民の生命を危険にさらす完全な武力威嚇行為であり、どの国であっても戦争一歩手前の深刻な危機として扱われるレベルの出来事だ。

また南シナ海では、フィリピン沿岸警備隊の船舶に対して、中国側がレーザー照射・放水砲・体当たりといった暴力的手段を日常的に用いている。国際仲裁裁判所は南シナ海における中国の主張を一切認めず、フィリピン勝訴の判断を下しているにもかかわらず、中国は判決を完全に無視し、武力による既成事実化を進めている。
これらの行為はアジア太平洋地域の安定を破壊するものであり、フィリピン・ベトナム・マレーシアなど多くの国が、中国の姿勢を「露骨な武力威圧」「地域の脅威」と名指しで批判するようになった。

つまり、
領海侵犯(尖閣
武力威圧(南シナ海
ミサイル落下(日本EEZ

という三点を見れば明らかなように、
中国による“レッドライン越え”は単発的事件ではなく、
日常業務として繰り返されている国家行動そのものである。

こうした“背景の事実”を無視したまま、日本に対して「レッドラインを超えた」と批難すること自体が、すでに国際社会との常識のズレを示していると言えるだろう

■ 3. 中国外務省の声明の矛盾:

「侵略」も「軍国主義」も「威圧外交」も、実際に行っているのは中国自身

中国外務省が日本に浴びせた非難は、
すべてそのまま中国自身に当てはまる。

✔ 「侵略行為」=中国

領海侵犯、人工島の軍事拡大、武力を伴う恫喝。
これらを継続的に行っているのは中国だ。

✔ 「軍国主義」=中国

軍事費は日本の4〜5倍。
空母群、極超音速ミサイル、台湾包囲演習など、
行動パターンは軍国主義国家そのもの。

✔ 「周辺国を力で脅す」=中国

台湾、フィリピン、日本(尖閣)を日常的に威圧。

✔ 「歴史を逆行させる」=中国

古代の「中華帝国」を根拠に領土を主張する行為こそ、歴史逆行の最たるもの。

にもかかわらず
「日本が軍国主義に戻った」と批判する。

これは完全に 自己矛盾 である。

■ 4. SNSでの影響工作——X(旧Twitter)の所在地表示で暴かれた

2025年、Xの仕様変更により、
アカウントの所在地が一部表示されるようになった。

すると、

琉球独立を煽るアカウントの多くが
中国本土・香港・米国の中国系コミュニティから発信されていたことが判明。

これは、以前から指摘されていた

  • 沖縄分断工作

  • 日本国内向けの認知戦

  • 台湾関連の世論操作

が現実に行われていた可能性を裏付けるものだ。

中国外務省の声明とSNS工作の内容が一致しており、
国家主導の複合的プロパガンダ と見るのが最も自然である。

■ 5. “自分の行為を相手に転嫁する”プロパガンダはなぜ有効なのか

ここからが核心である。

中国やロシアが繰り返す
「投影(プロジェクション)型プロパガンダ は、
国際政治学と心理学の観点から見ても非常に強力だ。

その理由は以下の通り。

① “先に悪者ラベリング”すると、相手が弁明に追い込まれる

プロパガンダでは “先に言った側が勝つ”
相手が事実を説明しても「言い訳」に聞こえる。

② 紛争の責任を「どっちもどっち」に見せかけられる

侵略者が
「相手も挑発した」と主張すると、
国際社会の一部は中立化する。

ロシアが使った手法と同じ。

③ 自国民への統治に極めて有効

独裁国家では、国民に
「敵」が必要。
投影型プロパガンダはその最適なツール。

④ 中立国(グローバルサウス)に響きやすい

発展途上国は「強い方の物語」に流されやすく、
「どっちも悪い」とされると侵略側が得をする。

⑤ “正当防衛の物語”を捏造できる

侵略をしている側が
「自衛のため」と言い張れば、法的正当性が偽装される。

国連への書簡で
「日本が武力介入するなら自衛権を行使する」
と書いたのはこのため。

■ 6. 日本の「自由すぎる社会」が悪用されている

反日的な発言を繰り返してきた宋文洲氏の例は、象徴的と言える。
氏は「中国にいる」と発信していたが、今回の X の所在地表示の導入によって、実際には日本から発信していたことが判明した。

つまり、
中国を擁護しながら日本を口汚く徹底批判する言論を続ける人物が、結局いちばん安全に暮らせる場所は“日本”だったという皮肉な現実が浮かび上がったのである。

日本では、どれほど日本や政府を批判しても、処罰されることはない。
しかし、中国で同じように“反中発言”を続ける外国人が、安全に生活できる状況は想像しがたい。

この対照は、日本という国の“開放性”を象徴している。
日本はあまりに自由で、あまりに平和で、そしてある意味ではおめでたいほど寛容な国だ。

その長所は誇るべきものだが、同時に
国外勢力に悪用されやすい脆弱性
とも紙一重であることを、今回の件は示している。

■ 日本人は“ぶれずに”中国という現実を認識し続けなければならない

本記事の整理から見える結論は明確だ。

✔ 侵略しているのは中国
軍国主義なのも中国
✔ 威圧外交を続けているのも中国
✔ 歴史逆行をしているのも中国
✔ 国連書簡は国際社会向けの宣伝戦
SNS工作は日本国内への認知戦
✔ そして“自分の行為を相手へ転嫁する”プロパガンダ

中国外務省の「レッドライン越え」発言も、
日本を非難した国連書簡も、
その構造は プロジェクション型プロパガンダの典型例 である。

そして今回の一連の出来事で明らかになったのは、
中国の悪質さが突然始まったわけではなく、
以前から継続して行われてきたことが“可視化された”だけだという事実である。

  • 領海侵犯

  • 軍事威圧

  • 沖縄分断工作

  • SNSでの言論操作

  • 国連を使った国際プロパガンダ

これらはすべて、何年も前から積み重ねられてきた。

今回、高市氏発言を契機に、
多くの日本人がようやく“現実”を視界に入れ始めただけにすぎない。

中国は国際政治において、日本にとって間違いなく戦略的脅威(threat)である。
この認識は、感情ではなく 事実に基づく国家安全保障の前提条件だ。

そして何より重要なのは——

たとえ今後、一時的に日中関係が“改善”したように見えたとしても、
中国という国家が日本に対してレッドラインの外へ出ることは決してない。

理由は単純で、中国の国家戦略そのものが
「日米同盟の弱体化」「台湾の併合」「東アジアの覇権獲得」を目的として動いているからだ。

外交の緊張が緩む瞬間はあっても、
中国の戦略目標が変わることはない。

 

だからこそ日本人は、
その時のニュースや感情に左右されず、“ぶれずに”中国の現実を認識し続ける必要がある。

中国という国家が日本にとって戦略的脅威であるという事実は、
関係改善ムードが生まれようと、外交儀礼が整えられようと、
決して変わらない。

なぜなら中国の国家戦略そのものが

  • 東アジアの覇権獲得

  • 台湾の併合

  • 日米同盟の弱体化

  • 日本の発言力の抑制
    を目的として動いており、
    この方向性は政権が続く限り変わりようがないからだ。

たとえ表面的に緊張が緩和したとしても、
繰り返しになるが中国が“レッドラインの外側”へ出ることは絶対にない。

いまの日本に必要なのは、表面的な外交ニュースを追うことでも、SNS上での獣の威嚇に一喜一憂することでもない。

必要なのは、国家が仕掛ける情報戦を見抜き、騙されないための「目」と「頭」と「仕組み」を持つことだ。


まず求められるのは、

プロパガンダを見抜く力である。

中国が今回用いたような“自分の行為を相手に転嫁する”プロパガンダは、

何も特別なものではない。

ロシアも常用し、独裁国家が歴史的に繰り返してきた古典的手法だ。

これを「正論」に見せかける巧妙さに惑わされず、

意図と構造を読解できる国民的リテラシーが不可欠だ。


次に必要なのは、

情報戦に巻き込まれない判断力だ。

SNSは便利だが、国家レベルの工作が入り込む時代になっている。

Xでの“琉球独立”アカウントの所在地が次々と中国本土・香港であることが判明したように、

日本は外部勢力にとって“開放されすぎた情報空間”であり、

認知戦の格好の標的になりうる。

そのリアルを理解し、感情ではなく事実に基づいて情報を選び取る判断力が必要だ。

 

さらに忘れてはならないのは、

自由社会の脆弱性を補う制度と戦略である。

言論の自由を守りながらも、国家の安全を脅かす情報操作に対しては、

民主国家としての防御策を整えなければならない。

国内外の情報流入を可視化する仕組み、

サイバー・認知領域への対策、

教育やメディアリテラシーの強化など、

“自由の弱点”を“自由の強み”へと転換する戦略が求められる。


そして最も大切なのが、

事実を直視する覚悟である。

中国が何をしてきたのか、

どのような意図で動いているのか、

日本に何を突きつけているのか。

それらを「関係改善の空気」や「一時の友好ムード」で忘れてしまうことこそ、

日本が繰り返してきた最大の弱点だ。


外交の緊張が和らいだとしても、中国の国家戦略は変わらない。

一度可視化された事実から目をそらさず、

長期的視野で日本が進むべき方向を見据える覚悟が必要だ。


この覚悟こそが、

これからの日本の安全保障を支える基盤となる。

国家の未来は、強い軍事力だけでなく、

真実を見抜く「認識力」と「判断力」と「構造的備え」によって守られる。


その土台を築けるかどうかが、

これからの日本の生存を左右する。